ル・コルビュジエの最後の住まい ナンジェセール・エ・コリ通りのアパートメント「第4話」

フランスを代表する建築家ル・コルビュジエ(Le Corbusier)が妻のイヴォンヌとともに、1934年から1965年にかけてに住んでいたパリ郊外にあるアパートメント「ナンジェセール・エ・コリ通りのアパートメント」についての第4話目です。

第4話は、前回の「キッチン」の続き。
キッチンの写真を見ているうちに気づいたことについて。
もう一度、キッチンのシンク側の写真を見ていきましょう。
キッチンの窓から見える先に、ウインチ(巻上げ機)が吊られたスチール製の梁が見えます。しかもウインチには丁寧にも錆びて故障しないように、屋根がかかっています。

シンク側のイメージ。窓の外にウインチに吊られたスチール製の梁が見える

この建物は、エレベーターが小さく、大型の家具などはどのように運んだのか疑問に思っていました。マンションのリフォームでは、家具の搬入は最初に検討しておくことが大事なポイントなため、プラン(間取り)を見るときはクセで考えてしまいます。

トレースしたプラン

おそらくこの部屋に設置されている大型の家具などは、キッチン窓から見える先にあるウインチで、引っ張り上げたと思われます。では、引っ張り上げた後に同部屋に搬入したか。
よく見るとウインチそばのガラススチールサッシに丁番(扉を開け閉めする金物)がついているのが見えます。

スチールサッシに丁番が見える

ウインチそばのスチールサッシは両開きになっていて、そこから共用廊下へ搬入したと思われます。共用廊下側を見ると、両開きになっているサッシ部分には、取り外し可能なスチールのバーが上段、中段、下段と3段ついていて、落下防止に考慮されていることがわかります。

共用廊下。正面の扉はキッチンへの扉

おそらく、サッシを開けたときも手すりを取り付けたままで作業をし、搬入の一瞬だけ、手すりを取り外し、落下の危険性を最小限に抑えていたのだと思います。

次回は、主寝室を巡ってみたいと思います。
第5話に続く。